キレのよい恋愛短篇を読み終えたかのような読了感。
切ないのだが、その切なさは未来ある高校2年生の心の痛みではなく、その痛みを想像できてなお下された一つの決断にある。
こういう結果が訪れることは、本作の隅々から予見されていた。回りくどくはあっても、ドロドロとはしていないストーリー。そのドロドロしさは、彼がしっかりと文学の中で抱え込んでしまっていて、彼の人生の外には流れ出てこない。
「何もしてあげられない」と彼は言った。望まれていることを行うのが、本当に正しいことなのかどうかを疑う程度には彼は人生を生き、文学に親しんできた。挫折を知る人間だからこそ示せる優しさがあり、才能がある人間を知るからこそ手放せる勇気がある。でもそれは、そのぽんと背中を押す手は、彼自身が前を向いて歩き始めたからこそ、生まれ出たものであろう。
人は、一方的に何かを受け取ることなどできない。与えられているとき、人は与えている。その逆もまたしかりだ。
悲しくも優しい関係性の再構築という点で言えば、『リズと青い鳥』にも似た感触を覚える。
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