前巻に引き続き、ファンタジー世界での裁判もの。
表紙のイラストからもわかる通り、前回は有能悪徳弁護士キールが中心的に活躍していたが、この巻ではその影はずっと後ろに引いている。では、活躍しているのはアイリなのかというと、そういうわけでもない。むしろ本巻では、裁判の当事者たちに強いフォーカスが当たっている。それに伴い犯人を当てるミステリー的要素は減り、いかに裁判を決着させるのかというリーガル的要素が増している。
本巻に収録された二つの事件は、片方が「ドロップアイテムの所有権」を巡る話で、もう片方が「人権の境目をどこに定めるのか」と、なかなか興味深い。現実の世界でも法律にまつわる話はややこしいことが多いのだが、冒険者や人外の生物や魔法などが存在する社会ではそれに輪をかけた自体となるだろう。ただ、このまま単に事件を解決(というか裁判に連戦していく)だけでは大きな流れでのストーリーラインに起伏が欠けてしまうこともたしかだ。はたして、次はどのように展開するのだろうか。
蘇之一行 イラスト:ゆーげん [KADOKAWA 2017]
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