四コママンガと図解でHTMLとCSS3を学ぶ、という一冊。
一見ありがちなテーマのようにも思えるが、本書は細かく作り込まれている。特に射程の広さがいい。目次は以下。
CHAPTER 1 企画~どんなサイトになるかは企画で決まる!~
CHAPTER 2 デザイン~企画に合ったデザインをしよう!~
CHAPTER 3 HTML~文章や画像を貼り付けて、Webサイトの中身を作ろう!~
CHAPTER 4 CSS~その見た目、華やかにしてあげる!~
CHAPTER 5 JavaScript~まるで魔法? 動きを付けるのじゃ~
CHAPTER 6 PHP~できることの幅がグーンと広がる言語~
CHAPTER 7 公開~ついにWeb上に公開だ!~
CHAPTER 8 運用~Webサイトは公開してからが本番~
この手の話はいきなりサンプルが表示されて「さっそく実際にコーディングしましょう」となりがちだが、本書ではきちんと「企画」と「デザイン」を考える工程が提示されている。いわゆる「そもそも論」だが、なぜそのサイトを作るのか、どんな結果を求めているのかをあらかじめ考えておかないと、結果的に箱物Webサイトになりかねない。本書のタイトルが「Webサイトの制作の基本」となっているのは頷ける。
また、たいへん可愛らしいキャラクターが複数登場し、その設定にきちんと意味が込められている。擬人化されたHTMLは、なぜだかネコミミなのだが、どうやらそれはHTMLのタグ(<>)をあらわしているらしい。これにはちょっと笑ってしまった。また、彼女(僕っ子だが彼女である)は、非常にシンプルな服装をしていて、それをCSSちゃんが飾り付けてくれるらしい。これは「構造と装飾の分離」なわけだが、直感的でわかりやすい表現だ。
以上のように、全体的にわかりやすくするための配慮で満ちながらも、本質的な部分は決して外していない。
とは言え、本一冊でできることには限界がある。JavaScriptやPHPはさわりの紹介に留まっている。これらを実際に使えるようになるためには、それぞれの解説書を読み込む必要があるだろう。それでも、Webサイト制作の全体像を俯瞰する分には不足はなさそうだ。
後半ではSEOやPDCAサイクルにも触れられているし、それは当然冒頭の「企画」に呼応してくる。言わば、「Webサイトの制作」の地図を手に入れられると言ってもいい。
かっちりとした記述を好む人は受け付けづらいだろうが、少なくとも「難しすぎて途中で読むのが嫌になる」ということだけはない。むしろ、最後まで楽しく読める入門書である。