全7巻で完結している。
一体何の物語なのかと問われると、返答に困る作品だ。コミュニケーション(あるいはディスコミュニケーション)が中心には置かれているが、それだけということもない。(やや入り組んだ)友情の物語でもあるし、成長の物語でもある。
ともかく、一巻は読むのがきつかった。いじめの状況がもたらす悲惨さというよりも、その反動として返ってくるものの痛々しさが胸に突き刺さる。本作では、バツ印で人の顔が覆われているが、こういう表現はぜんぜんフィクションではない。心と現実世界の距離がふっと遠くなることは確かにある。その途端、世界は急に平べったくなり、意味というものががらがらと崩れ落ちていく。空いた距離は、溝となり(あるいは壁となり)容易に踏み越えることは叶わない。
言葉のあるなしはもちろん大切なことなのだが、それだけでは足りないことについて身に染みる作品だ。
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One thought on “『聲の形』(大今良時)”