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Kindle Unlimited騒動についての雑感

Kindle Unlimited(以下アンリミ)周りがザワついています。

アマゾン読み放題、講談社などの全タイトル消える:朝日新聞デジタル

通販大手アマゾンジャパンの電子書籍の読み放題サービスをめぐり、人気本多数がラインアップから外れた問題で、講談社など出版複数社の全タイトルが外れたことが3日、わかった。

まず、率直に言ってこれは悪手でしょう。基本的にAmazonはお代官商売というか、「俺がプラットフォームだ。従え。嫌ならば出て行け」というスタンスであって、もちろんそれはそれを言えるだけの基盤があるからこその発言であり、好き嫌いは当然あるにしても、そこには一定の合理性がありました。

が、今回のこの動きはどう考えても対応ミスです。雑な対処にしか見えません。一定のスタンスに基づく施策というよりも、場当たり的な印象を強く感じます。

なんとなくの予想ですが、全体を統括し、細かい調整を行う人がいないので、ざっくばらんに「文句を言ってきた出版社は退場してもらう」という一律な対処が行われていたのではないでしょうか。まあ、内情はわかりませんので確定的なことは言えませんが、少なくとも出版社から見たアンリミサービスへの信頼、利用者から見たアンリミの信頼を共に失ってしまったことは事実です。

もう一度言いますが、この動きは、巨大プラットフォーマーゆえの強権的な対応ではなく、個別の案件に細かく対応できないから雑に対処したようにしか見えません。アンリミの悲惨な状況に対応するにしても、もっとやり方はあったはずです。

出版社としても、こうしてきちんと抗議をしておかないと、自社の判断によってサービスから撤退したと利用者に思われてしまうでしょうし、それは自社ブランドを傷つけることにつながります。だから、声を上げるのは当然のことです。となると、その声はAmazonのブランドイメージ低下につながります。そして、それが起こることは簡単に予想できたでしょう。

もちろん、この状態を「契約違反だ」とAmazonに攻撃できない状態自体が__もともとこういうことも起こりうることを織り込まれた契約を結ばされていたという点において__負け戦なわけですが、だからといってAmazonの対応が勝ち戦だとは言えないでしょう。

基本的にAmazonの(少々強引な)やり方は、「すべては利用者のため」という目的によって正当化されていたわけですが、今回はその目的すら欠損しています。

そこには、根本的な読みの甘さがあり、それに性急かつ場当たり的に対処してしまったというのがこの施策なのだと感じます。

で、その根本的な読みの甘さは、「本」を読むという行為を一律に捉えすぎていたのでしょう。「本」といっても、

・小説などの文字主体
・雑誌
・漫画

の3つがあり、それぞれで消費の形態が異なります。それを一緒くたに「読み放題サービス」に詰め込めば、混乱するのは当然のことです。

さらに、日本では漫画のニーズが強く、お金がなくて暇が多い人も多く、「少しでも得をする」ための情報交流が盛んで、似たようなタイミングで同じものに飛びつく、という傾向があり、無料体験の30日間で__つまり、一銭の利益も生まない期間に__、おそろしいくらいにコンテンツが消費されてしまったのでしょう。

もちろん、それは投資なわけで、広い意味での宣伝広告費であります。ある程度は、事前にそういう計算もあったでしょう。それでも、サービス利用者がいて、しかもそれが増え続けているという場合にのみ、その投資は合理的となります。

私のタイムラインの感想を見る限りでは、ごく一部のユーザーが、ものすごい数を利用し、しかも、たいして継続しなかった(少なくとも、大幅な利用者の増加はなかった)というのが印象です。どう考えても帳尻が合いそうにありません。

積み立てたお金が予想以上に失われても、サービスとしての可能性があればそのまま継続するでしょうが、そこまでの発展は見込めそうになかった、ということなのでしょう。

で、これは『コークの味は国ごとに違うべきか』を読んでも思うことですが、均一的なグローバリゼーションというのは、ある種の商品やサービスでは成り立たなくて、どうしてもローカライズを含むセミ・グローバリズムにならざるを得ないのでしょう。だからこそ、各国に支社を作り、現地の企業と関係性を築きながら、文化的な調整を行う必要があるわけです。

コークの味は国ごとに違うべきか

で、アンリミに関してはうまくそれができていなかった印象があります。

おそらくどんな数字(データ)を見ても、日本の読み放題に漫画を混ぜるべきでないことはわかったはずです。あるいは、混ぜるならこの料金設定では回らないことが予想できたでしょう。そこまで踏み込んだことができないのであれば、はじめからスタートしない方が良かったのかもしれません。

ともあれ、Amazonがまだ日本でアンリミを続けていくならば、今回外された出版社さんの作品もいずれ戻ってくるかもしれません。それに期待しつつ、「Kindle Unlimited で読める光文社古典新訳文庫のリスト」の記事は消さないで残しておこうと思います。

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