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『たいへんな生きもの: 問題を解決するとてつもない進化』(マット・サイモン)

進化って、そりゃもうすげーんですよ。

だって、特定の蟻を洗脳しちゃったり、宇宙に行っても死ななかったり、水中でパンチしたらあまりの速度でキャビテーション気泡が生じちゃったりと、人間の予想を遙かに上回る生物が生まれているわけですよ。優れたデザイナーも、セントラルセンターも持たない状態で、そんな変な生き物が生まれちゃうわけですから、こりゃもうすごいとしか言いようがありません。本書のページをめくるたびに、「ひえっ」という驚きの声が漏れてきます。

地球という惑星は、他の惑星に比べれば生命体が生存しやすい環境ではありますが、それでもまったく問題なしというわけにはいきません。そこで突然変異と選択圧の登場です。ダーウィンさんですね。とにかくいろいろ変えてみる。うまく環境適応したものは、運が良ければ残る。あとはその繰り返し。

人間の寿命からすれば、かなりたいくつな時間単位での繰り返しがこれまでずーっと行われてきました。

で、それによって生物はある種の問題を解決するわけですが、困ったことに生物同士は相互に影響しあっています。あちらが問題解決をすれば、今度はこちらに問題が生じる。でもって今度はこちらが問題解決をして、あちらに問題をパスする。いたちごっこです。でも、そのようにして系が決して安定することがなかったらこそ、この地上には異様なほど多様な生物種が生まれているのでしょう。

本書のタイトルである「たいへん」には、〈苦労する〉と〈すげぇー変〉の二つの意味がかかっているのでしょうが、もちろん「変」だと思うのは、私たちが人間であり一つの生物種であるからです。それぞれの種から見たら、自分の在り方が普通であり、人間の方が変わっているでしょう。しかし、人間様は傲慢にこの地球上に拡張してきたので、あたかもインテリジェンスデザイナーのように地球環境を変え、生物種の偏りにまで手を伸ばしています。その辺は『ニワトリ 人類を変えた大いなる鳥』『人類はなぜ肉食をやめられないのか』がまざまざと明らかにしてくれています。私たちは、「たいへん」を統治し、「たいへん」を均そうとしています。それも人間種だけでなく、この地球環境すべてで。

それが進化と多様性の力を軽視する愚かしい行いであることは間違いありませんが、それなしでは70億人とも言われる地球人類の快適で安全な生命は維持できないこともまた確かなのでしょう。それを開き直ることなく、受け止める必要があるかもしれません。

とりあえずは、まあ、生物を知るところからですね。

たいへんな生きもの: 問題を解決するとてつもない進化
マット・サイモン イラスト:ウラジーミル・スタンコビッチ 翻訳:松井信彦 [インターシフト 2017]

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