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『響~小説家になる方法~』(5)(柳本光晴)

マンガ大賞2017の大賞を受賞したらしい。めでたい限りだ。何しろ文句なく面白い作品である。小説家になる方法に興味がなくても楽しめるだろう。

ひと言で言えば、「ロック」な作品だ。ギターをかき鳴らし、たたき割るようなスピリットに満ちあふれている。

心の半分では、「こんなやつ、さすがに小説家でもいねーよ」と思いつつも、もう半分ではあこがれに似た気持ちがどうしても消えない。まぎれもない天才が、まぎれもない異端として表現されている。痛快であり、それと共に献身にも似た真摯さがある。(小説)作品とはやっぱりこうでないとな、という想いも共感する。

5巻までの時点で、視点は三つある。主人公である響、編集者のふみ、そして一つ上の先輩でもあり文芸部の部長でもあるリカだ。本作に陰影をつけ、かつ私たち凡人に共感の橋を架けてくれるのはリカの存在である。彼女は優秀で頭一つ抜け出ていながらも、頭一つしか抜けていないことに戸惑い、焦り、困惑し、そして絶望に似た気持ちを抱く。紛れもなく彼女が一番人間らしい苦悩を抱えている。天才が抱える問題(ただし気にしない)と、秀才が抱える苦悩の対比が、本作をただのロックなだけの作品にはしていない。

ちなみに、小説家のからみで言うと、去年のマンガ大賞2016にノミネートされた『恋は雨上がりのように』も面白く読めるはずである。こちらは苦悩の方に重点が置いてある。

響~小説家になる方法~(5) (ビッグコミックス)
柳本光晴 [小学館 2016]

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