0

『ソードアート・オンライン19 ムーン・クレイドル』(川原礫)

あれっ、終わったんじゃなかったっけ? と思いきや「穴埋め」の物語である。

前巻のラストでは、時間軸がぶっ飛んだ未来の世界が描かれ、その先の展開が示唆されていたが、本巻はそのぶっ飛んだ中で何が起きていたのかが描かれている。

番外編というのではなく、きっちり本編に位置づけられるのだが、それでも前巻までに宿っていた一つの大きな文脈は終わってしまったのだな、とは感じる。生きることと意志の関係。それを仮想的な現実と真なる人工知能という対比先を持ち出すことでより鮮明に描き出す、という一つの大きな文脈である。

その分、純粋にファンタジーとして楽しめる雰囲気にはなっている。そのあたりは同じ著者によるスピンオフ「プログレッシブ」シリーズと感覚は近い。ただ、本作はファンタジーからSFという転換も期待できそうである。そのあたりの綱渡りをどのように行うのか。次巻も楽しみである。

ソードアート・オンライン19 ムーン・クレイドル (電撃文庫)
川原礫 イラスト:abec [KADOKAWA 2017]

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です