遂に、≪アリシゼーション≫が完結した。思い返せば、長い物語だった。
ソードアート・オンライン13 アリシゼーション・ディバイディング
ソードアート・オンライン14 アリシゼーション・ユナイティング
ソードアート・オンライン15 アリシゼーション・インベーディング
ソードアート・オンライン16 アリシゼーション・エクスプローディング
ソードアート・オンライン17 アリシゼーション・アウェイクニング
ソードアート・オンライン (18) アリシゼーション・ラスティング
9巻からのスタートなので、現状、全シリーズの半分が≪アリシゼーション≫にあたる。実際の執筆の流れはどうあれ、物語としては、ここに至るための経緯がそれまでのストーリーだったと言えるだろう。
「ソードアート・オンライン」の第一巻は、それなりに面白かった。及第点を60とするなら、70点後半はあった。二巻以降は、ゲームを移動するという自由さを得て、さらに点数がアップ。80点台に。「アクセル・ワールド」シリーズとの合わせ読みも加えれば80点後半。これだけも十分な名作と言える。
しかし、9巻から始まった≪アリシゼーション≫は、質を変えるものだった。90点台でも足りないくらいだ。元々ライトノベルにしては、重みのある物語ではあったが、9巻以降から飛躍的に質感と豊かさが増した。ほとんど決定的とも言える変化だ。『アリスの物語』の「アリス」も、少なからず本シリーズに影響を受けている。
本巻は、その≪アリシゼーション≫の完結巻である。盛り上がりで言えば、おそらく前巻の方が強かっただろう。アクション映画なら、エンディング直前の20分前ぐらいは、それまでの敵・味方が総主演で激しくバトルする。その後は、ボスと主人公の一騎打ちが待っている。決定的な力を持つもの同士のバトル。そして、終結。そちらの担当が本巻だ。
良い物語だったのだろうか。
微妙に答えにくい問いだ。人によっては結末に納得できないこともあるだろう。しかし、力強い物語であったことはたしかだ。SF的な視座を提供しながらも、青年向けの筋は外していない。意志・希望・愛といったものがきちんと掬われている。
それにこの長さにもきちんと意味はあった。9巻以降が素晴らしいとは言え、9巻から始まっては台無しなのだ。1〜8巻という土台があるからこそ、9巻以降が生きてくる。ある種のリズムの変化と重さの蓄積は、長く綴られた物語からしか生まれ得ない。こればかりは、「効率化」できないものなのだ。
とはいえ、どうやら「ソードアート・オンライン」自体が終わったわけではないらしい。一つの区切りがついた、ということだろう。もし、本作が続くのならば、これよりもさらに大きなものを構築してくるのか、それとも案外路線を変えて新しいものを提示してくれるのか。今から楽しみである。