「ウェブでは長文は読まれない」
そんな言説がある。首をかしげる。
「それって、単にウェブには長文を読ませられるライターが少ないだけなんじゃないか」
Bomb!
だって長文ですよ。140字とはわけが違う。
文章というのも、一つの作品なわけで、そこには技能とか技術とかが入ってくるわけですよ。で、長い文章というのは、書く方もたいへんなわけですが、読む方だってたいへんなんですよ。文字を追わなきゃならないし、意味を取らなきゃならないし、ときには世界を想像しなきゃならない。ただ、言葉を並べればOKというのとは違うわけです。
言ってみれば書き手が読者の心をがっしりつかんで、次の文へ、次の文へとドライブさせていかないと、長文なんてまず読まれません。平坦な道だったら車の運転をしていてもやっぱり眠たくなりますよね。それと同じで、飽きさせない展開だとか、急カーブのようなリズムの変更とか、そういうことに気配りできる技能がないと、長文を読んでもらう(読み切ってもらう)ことは難しいでしょう。
でもそれは、短文よりも長文の方がえらい、ということではなく、単に長文には長文用のスキルがあって、そういうスキルを持っている人が少ないんじゃないのかって話です。
でもですね、「ウェブでは長文は読まれない」という言説が受け入れられて、書き手がどんどんそっちにシフトしていくと、長文用のスキルが育つはずもなく__どれだけ50m走を練習してもフルマラソンの完走には近づきませんよね__、結果的に、つまり予言の自己実現的に「ウェブでは長文は読まれない」という自体が生じることはあるんじゃないかな、という気はします。
まあ、そうはいっても世の中にはひねくれ者が一定の割合で(おおよそ10人に一人)存在しているので、そういう人たちを無理矢理押さえつけない限りは、長文が死に絶えることはないでしょう。
たぶん、ですけど。