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Lifehacking Newsletter 2016 #17より 〜フィルターバブルとキュレーション〜

Lifehacking Newsletter 2016 #17より

このHonkureというブログも、言ってみればメディア・キュレーション・ブログである。私が読んだ本、漫画、アニメといったものを、私の主観軸で紹介していく。ぶらぶらと眺めてもらえれば、面白い本に出会える__かもしれない。

ソースについて考えよう。

私は、「ベストセラー」があまり好きではない。○○万部突破と言われれば言われるほど、読む気を無くす。天の邪鬼なのだ。そういう本を一冊手に取る代わりに、新書コーナーとか文庫本コーナーをネチネチ眺め回して、面白そうな本を探すのが好みに合っている。

でも、その作業にだって本屋的違いは生じる。「ベストセラー」とその周辺しかほとんど見つけられないような書店もあるし(岩波新書や講談社現代文庫が置いてなかったりする)、これぜんぜん売れてないんだろうな、というマクルーハンの『メディア論』がずっと陳列されているような書店もある。たぶん、売り場効率的には前者の方が優れているのだろう。

ソースがリンクしているのがわかるだろうか。

Honkureの元になっているのは私の本のチョイスだ。そのチョイスは書店の本のチョイスに影響を受ける。書店は書店で、どんな本が出版されているのかに影響を受けるし、それはつまり著者たちがどんな本を書いているのかに影響を受けるということだ。その著者だって、どんな情報源から文章を生成するかということで他の本をチョイスしている。

私が読んだことも無いような本を読みまくっている人が本を書き、その本が書店に選ばれ、私の手元に渡り、そして私がブログで紹介する。それぞれのステップで売り場効率的なものと、そうでないものが含まれうる。

そして売り場効率を最大化するものが、フィルターバブルである。


誰かがベストセラー的なものを書き、それを書店が販売し、私が読んでブログで紹介する。それだけならば、こうした情報の流通は必要ない。書き手と読み手だけいればいい。だって、それはベストセラーなのだから。

ブログにも似たことが起こりうる。バズりそうな記事を書き、実際にそれがバズり、ニュース・アプリがそれを拾い、私がそれをシェアする。ここには、ほとんど何の意味もない。単に情報が増殖しているだけである。

ノイズのない完璧なシグナルだけの世界とはそういうものだ。突然変異がまったく発生しないDNAの複製は自らのコピーを作るだけになる。売り場効率にしか価値を認めないというのは、ようは突然変異の拒絶なのだ。当然、大規模な環境の変化には適応できなくなる。進化の袋小路だ。


ニュースをキュレーションする人がいたとしよう。それはそれで便利な存在だし、センスも必要だろう。が、その人が日常的に参照している情報源が、バズりをベースに編纂されているものであるならば、実はそういうキュレーションを読まなくても、普通にタイムラインを見ていたら、いつかは回ってくるネタになる。

キュレーションが価値を持つのは、その人がその人独自のニュースソースを持つかどうかにかかっている。何も、情報屋にお金を払わなければいけない、といったことではない。単に、私が書店の棚を巡るように、書店が売れるかどうかはっきりしないような本を置くように、自分の足なり手なり多数のクリックなりを使って情報を「探しているのか」という点なのだ。

そして、実はそれこそが「仕事」ということでもある。人がどれだけうごいたか、ということなのだ。それが価値というものでもある。


さて、誰かが読んでいた、誰かが勧めていた、ブログ記事やSNSで見かけた、以外で手に取った本は何かあるだろうか。それを探そうとしたことはどうだろうか。

そう、あんまりないかもしれない。テクノロジーは、人の欲望を実現するツールだ。だからたぶん、私たちはフィルターバブルに閉じこもりたがっているのだ。そのことを忘れてはいけないだろう。そうしたテクノロジーは、基本的には私たちの欲望に沿っているんだ、と。

だからこそ、それに抗う力が必要である。

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