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WRM 2017/04/03 第338号

さて、WRM338号が配信されました。

冒頭の「はじめに」を公開しております。


『Dr.Hack』を脱稿した後、しばらく燃え尽きておりました。思った以上に疲れていたようです。作業に取りかかろうと思うものの、なかなか身が入りません。いや、気が入らないと言った方が良いでしょうか。

仕方がないので、最低限の作業だけは行い、後の時間は別のことをやっていました。読書・映画鑑賞・ゲームなどです。

そうしてインプットを集中的かつ大量に浴びていると、徐々に、「よし、自分も手を動かそう」という気になってくるから不思議なものです。加えて、本の感想を頂けたりなんかすると、脱稿直後の「ああ、もう、しばらく、本作りはいいや……」という〈うんざり菌〉も一撃のもとに吹き飛んでいきます。

なかなか現金なものです。

職業としての物書き。
姿勢としての物書き。
性質としての物書き。
生き方としての物書き。

おそらく、そういうものが混ざり合って私を形成しているのでしょう。

〜〜〜考える人、休刊〜〜〜

雑誌『考える人』が休刊されるようです。

◇雑誌「考える人」休刊のお知らせ | News Headlines | 新潮社
http://www.shinchosha.co.jp/news/article/374/

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雑誌「考える人」(新潮社刊)は、4月4日発売の2017年春号(第60号)をもって休刊することとなりました。
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4月4日発売の号で休刊とのこと。以下のような記事もあがっていました。

◇特集ワイド:季刊誌「考える人」休刊 消える「ユルい」思想誌  – 毎日新聞
http://mainichi.jp/articles/20170330/dde/012/040/010000c?fm=mnm

>>
政治経済、論壇と距離を置き、より抽象的なテーマを特集する、「暮しの手帖」の知的おじさん版といった雑誌だ。意識の高い人の部屋にさりげなく置かれていそうな軟らかい思想誌の欠落は、何を意味するのか。
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「意識の高い人の部屋にさりげなく置かれていそうな」という表現には、若干の毒を感じないではありませんが、それでも独自のポジションを持つ雑誌の欠落は、何かしらの世相を映しているのではないか、くらいの危機感はうかがえます。で、おそらくそれはその通りなのでしょう。この手の雑誌の存在価値は、少なくとも大手メディアには認められていない──ような気がします。

とは言え、私はこの雑誌の熱心な読者などではなく、せいぜい気になった特集があったら買ってみる程度の関係でしかありませんが、主催している『かーそる』という雑誌は『考える人』を多少(0.35mgほど)参考にしているので、この休刊話にはいろいろ感じるものがあります。

その感覚の大半は悲しみではなく、「お疲れさまでした」という気持ちであり、加えて(やや傲慢ではあるかもしれませんが)バトンを受け取った気持ちです。

結局の所、文化というのは受け継いでナンボなわけですから。

〜〜〜広告とコンテキスト〜〜〜

たとえば、何かのニュース記事を読みに行って、そこでいきなり動画が再生されたりすると、ドキッとするとともに、イラっともします。

でも、動画の広告が嫌いなのかというと別にそういうわけでもなく、YouTubeなどては__スキップするにせよ__、ドキッとしたりイラっとすることはありません。

この違いは何だろうかと考えてみると、一つにはコンテキストの違いであり、もう一つにはそのコンテキストに応じた期待があるからでしょう。

ニュースサイトを読もうとしているときは、「今から文字情報を摂取するぞ」という心持ち、姿勢、期待といった心の動きが生じています。その気持ちのベクトルと共にリンクを踏むわけです。にも変わらず、リンク先で動画が表示されてしまうと、期待と体験にずれが生じてしまうのです。それが違和感のもとなのでしょう。

メディアの運営において広告というものが外せないのならば、最低限その広告の配置には、メディア摂取における期待感を意識した方が良いのかもしれません。それを間違えると、(PVは発生しても)「広告効果」なるものはかなり縮減してしまう気がします。

〜〜〜成功法則〜〜〜

ある程度、社会経験を積んでいる大人であれば、

「絶対確実に儲かります」

と言われたら、眉をひそめ、そこにつばをつける可能性が高いでしょう。少なくとも、丸々鵜呑みする人はほとんどいないはずです(実際はどうかはわかりませんが)。

しかしながら、「成功法則」と呼ばれるものをかなり真剣に信じている(あるいはその発言者に陶酔している)人はそこそこ見受けられます。

不思議です。

だって、「絶対確実に儲かります」と「成功法則」って、本質的には同じことを言っているわけですから。なんといっても「法則」ですからね。その言葉は絶対確実なものを感じさせます。

たとえば、ボイル=シャルルの法則は「気体の圧力Pは体積Vに反比例し絶対温度Tに比例する」であって、「四回に一回ぐらいは気体の圧力Pは体積Vに反比例し絶対温度Tに比例する」ではありません。法則というのは、常にそうなるからこそ、法則なのです。

「これこれこういうことをやれば、あなたは成功します」という物言いは、たしかに法則的に聞こえます。それを語る言説も、きっとピッタリ適合する事例を用いて説得力を高めてくるでしょう。が、それが本質的な意味で「法則」であることはありえません。気象に関する物理法則がすべてわかっていても、数ヶ月後の天気予報をピタリと当てるのが難しいように、社会の中の個人の振る舞いをいくら制御しても、その結果を見通すことはできません。

だからせいぜい「成功法則」と呼ばれているものは、「成功する可能性を高める努力」が実態に近しいでしょう。しかし、この表現にしてしまうと、とたんにありがたみみたいなものが薄れていきます。それではたぶん売れないのでしょう。

ここで適者生存の考え方を用います。

「成功法則」という言説と「成功する可能性を高める努力」という言説が両方存在したとします。この場合の〈言説〉は、〈ミーム〉と捉えてもらっても結構です。で、「成功法則」は売れて、「成功する可能性を高める努力」は売れない。となると、社会に流通するのは前者となり、後者はいずれ息絶えます。

ふむ。

つまり、実態に即しているかどうかではなく、「それらしい」「もっともらしい」「ありがたみがある」言説の方が、社会では生き残るというわけです。

ここからいろんなことが言えてしまうわけですが、一つだけ書いておくと、結局ここ最近言われているポストトゥルースなんて動きは、はるかずっと昔から社会に根付いていた、ということなのでしょう。単にそれが表面化しなかった、社会に大きな影響を与えることは少なかった、というだけなのだと感じます。

〜〜〜Q〜〜〜

さて、今週のQ(キュ)です。正解のない単なる問いかけなので、頭のストレッチ代わりにでも考えて見てください。

Q. 「ありがたみがない」言説を社会に流通させるハックにはどんなものがありうるでしょうか。

では、メルマガ本編をスタートしましょう。

今週も「考える」コンテンツをお楽しみくださいませ。

目次

○BizArts 3rd 「第五章 第十一節 ロールさまざま4」
タスク管理を掘り下げていく企画。連載のまとめに入っています。

○SS 「小説装置」
読み切りのショートショートです。

○エッセンシャルEvernote vol.15 「Evernoteと他のツール」
週替わり連載。今週はEvernoteについて深掘りを。

○Rashitaの本棚 『質的社会調査の方法』(岸 政彦 石岡丈昇 丸山里美)
Rashitaの本棚から一冊紹介するコーナー。新刊あり古本あり。

質的社会調査の方法 -- 他者の合理性の理解社会学 (有斐閣ストゥディア)

○物書きエッセイ 「リクエストについていろいろ」
物を書くことや考えることについてのエッセイです。

○Q&A 「主体性を損ねないために」


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