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『村上春樹 翻訳(ほとんど)全仕事』(村上春樹)

タイトル通り春樹さんの翻訳作品をざっと紹介したもの。おまけの対談コンテンツも面白い。

ある程度、予測的に「数は多いだろうな」と思っていたが、それがまあ本当に多い。36年間で70冊ほど。春樹さんは小説家としては多作な方ではないので、それと対比すると唖然とするばかりである。それくらい翻訳が好きなのだろう。その感覚は本書に掲載された文章の端々からも感じられる。

本書を読んでいて、改めてレイモンド・カーヴァーの作品を読み直したくなったのが一点と、物書きとして何かしらの訓練をしておく必要があると感じたのが一点。後者は、春樹さんにとっての翻訳がそうだったのだろうが、では、自分にとってはなんだろうか、と考えた。直線的に小説を書いているだけでは、どこかしらにどん詰まりがあるのではないのか、と感じる。

あるいはそれは私にとっての実用書と創作文にあたるのあもしれない。それぞれは別の文章であり、別の機能と制約を持つ。それぞれに十全に脳を使うことで、トレーニング的な効果が期待できる……と良いのだが。

▼目次データ:

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まえがき
翻訳作品クロニクル(1981〜2017)
翻訳について語るときに僕たちの語ること〈前編〉対談 村上春樹×柴田元幸
サヴォイでストンプ オーティス・ファガーソン 村上春樹 訳
翻訳について語るときに僕たちの語ること〈後編〉
村上春樹の翻訳 寄稿 都甲幸治

村上春樹 翻訳(ほとんど)全仕事
村上春樹 [中央公論新社 2017]

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