WRM
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WRM 2017/02/20 第332号

WRM332号が配信されました。

冒頭の「はじめに」を公開しております。


すでに2月も後半にさしかかっていますが、Kindle「月替わりセール」の2017年2月分に拙著が選ばれていることに気がつきました。

◇EVERNOTE「超」知的生産術 | 倉下 忠憲
https://www.amazon.co.jp/EVERNOTE-ebook/dp/B01EL08HW2/

セルフパブリッシング本であれば、セール対象に選ばれた場合、「セール対象になりましたよ。でも秘密でお願いしますよ。あと、勝手に値段変えちゃだめですよ」というメールがやってくるのですが、出版社さん経由で出版している本はもちろんノン通知です。

今回はたまたまEvernote系の記事を書いていて、「そうだ、この本のリンクを貼っておこう」とAmazonにアクセスしたら、「あれって、なんかすごい安い」と気がつき、おそらく一番可能性が高い月替わりセールに選ばれているのではないかと仮説を立てて探してみたら見事に発見した、という流れで気がついたのですが、逆に言えば、まったくぜんぜん気がつかなかった可能性もあります。さすがにそれはもったいないです。

しかしながら、2011年に発売されたやや古い本でも、今回のようにセールがかかれば動きがあるのですから__なぜか紙版もちょっとだけランキングが上がっていました__、本の売り方にはまだまだ可能性が眠っていそうです。

〜〜〜本の体裁について〜〜〜

以下の記事を読みました。

◇デジタル出版で儲けるには? 紙のレプリカの“電子書籍”はいずれ…… – INTERNET Watch
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/event/1044708.html

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 新名氏も、電子書店から「もっと短い本をたくさん出して欲しい。そのほうが競争力がある」と言われていると明かす。いまの普通の本は、他のコンテンツと時間の奪い合いをするには長すぎるというのだ。紙のレプリカである“電子書籍”はいずれ、「昔はそんなのもあったよね」と言われるようになるのではないか、と新名氏は予想している。
 <<

当メルマガの『「本」を巡る冒険』でもたびたび触れていますが、電子書籍を「紙の本を電子化したもの」だと捉えているうちは、この新しいメディアが持つ可能性は十分活かしきれないでしょう。電子書籍だからこその「本」の形を模索していかないかぎり、「出版業界」全体の活性化も起きなさそうです。

でもって、逆説的でもなんでもないのですが、電子書籍だからこその新しい「本」の形式が生まれてくれば、紙の本の存在理由もまた残ることになります。両立するためには、それぞれのメディアが違う方向性を持つことが大切なのです。

で、「短い本」です。

以前のきばトークで少し話ましたが、たとえば岩波文庫から発売されている『職業としての学問』(マックス ウェーバー)は91ページしかありません。ウェバーの演説を起こした本なのですが、この本に「薄い!」と文句をつける人は(あまり)いないでしょう。しかしながら、今これと同じ薄さの本を新刊で出すことが叶うかというと、かなり>そうとう>むちゃくちゃ難しい気がします。

内容がとても優れていて、仮に企画が通ったとしても、新書に「仕立て上げられる」のではないでしょうか。ようはボリュームアップが行われるのです。なぜか? 単価を上げるため、でしょう。紙の本を作る上での利益を確保するためには、それは必要なことなのかもしれません。しかし、読者が求めているものは、そういうものではないかもしれません。

別の言い方をすれば、今よりももっと刈り込んだ(エッセンスを絞り込んだ)、「短い本」を低価格で多数発売すれば、これまで本を読んでいなかった(あるいは避けていた)層にアピールできる可能性が生まれてくるのではないか、という視点があるわけです。すでに本をたくさん買っている人に、これ以上の本を売りつけるのはもはや難しいでしょう。少なくとも、それで規模的拡大が起こるとは考えにくいものです。

しかし、「今は顧客ではない層」(いわゆるノンカスタマー)に希求できれば、市場そのものがごそっと動く可能性があります。そうなれば、パイ全体が大きくなり、その他の「出版業界」にも好影響が生まれる__というのはさすがに楽観的すぎる見込みですが、そうした施策をうたない限りは、同一の業界というのはじりじりと縮小していくのではないかと思います。

〜〜〜ミスマッチ〜〜〜

自分で本を書くようになって、つくづく思うことがあります。

本は、誰かに向けて書かれています。ある層に届けようと表現を整えれば整えるほど、別の層には届きにくくなります。これはもう仕方がありません。言語というか「表現」が持つ限界性のようなものです。

だから、自分が本を読んだときに、どうにも違うなという気がしたら、その本をこき下ろすのではなく、「そうか、これは僕に(私に)向けられた本ではないんだ」という言葉を胸ポケットから取り出して、タバコのように吸うと気持ちがずいぶんと落ち着きます。

でもって、それはやっぱり事実なのです。

〜〜〜京都型知性〜〜〜

梅棹忠夫さんは、京都の方です(異論はないでしょう)。

松岡正剛さんも、やっぱり京都の方です。

おそらくですが(間違っていたらごめんなさい)、くるぶしさん(読書猿さん)も京都の方だと推測しています。

貧弱なサンプル数で申し訳ないのですが、なんとなく近しい雰囲気を感じるではないですか。それは、ぎりぎり近い言葉を持ってくるならば「横断的」「越境的」ということです。

知性の在り方として、一つの領域を設定し、その領域を強固にしたり、掘り下げたりするスタイルがありうるでしょう。それを領域確立型知性とここでは呼びましょう。

上記の三人から感じる知性の在り方は、それとは違っています。さまざまな領域を渡り歩き、つながることが想定されもしないことをつなげてみたり、ある領域で機能している解釈を別の領域に持ち込んで新しい機能を生み出したりといった、「アンチ領域」(あるいはポスト領域)的な脈動を感じます。あえて名前をつければ、領域浸食型知性と呼べるかもしれません。

しかし、しかしです。むしろ「京都人」のイメージは、京都中心主義(京都絶対主義)であり、ものすごく強い領域志向を有しているものです。

このギャップというかミスマッチが興味深く感じられます。

〜〜〜「たいへんな作業」〜〜〜

自身の体験から言えることですが、「この作業は重要だ。そして大がかりだ」と考えれば考えるほど、そのタスクに取りかかるためのモチベーションは下がります。

いや、モチベーションは高まっているのかもしれません。しかし、実際にその作業に取りかかる可能性は下がります。なにせその作業は「たいへん」なのですから。言い換えれば、脳はその作業に必要なエネルギーの量を多分に見積もっています。で、手持ちのエネルギーの量が少ないと、そのタスクは着手されません。自明の理です。

これを「根性」で乗り切る作戦もありますが、あまりオススメはできません。なぜならそれは脳のエネルギー判断を停止させるということであり、本当にやってはいけない無理をしてしまう可能性があるからです。だから、エネルギー判断そのものに変化を与えるのが吉です。

作戦的には「5分だけやる」というライフハックと同じで、タスクの切り方を変えるのです。自分の願い的には、今日一日使って第一章を完成させたいと思っていても、タスクリストに「なんとしても第一章を完成させる」なんて書くのはバットハックです。むしろ「第一章のシーン1を完成させる」ぐらいにするのです。それでも大きければ(≒着手する気になれないなら)「シーン1を読み返す」くらいにします。

そこまでやってもやる気が起きないなら、休むタイミングです。その選択肢だけは忘れないようにしましょう。

以上のような心理メカニズムは、「大きなことを成し遂げようと思えば思うほど、実際の行動が生まれてこない」という皮肉な状況を引き起こします。「コツコツやること」が結局のところうまくいくのも、それが理由です。

タスクはあっさりやるのがよいのです。

〜〜〜Q〜〜〜

さて、今週のQ(キュー)です。正解のない単なる問いかけなので、頭のウォーミングアップ代わりでも考えてみてください。

Q. 「自分にタスクを着手させる」ための作戦を何かお持ちでしょうか?

では、メルマガ本編をスタートしましょう。

今週も「考える」コンテンツをお楽しみくださいませ。

目次

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2017/02/20 第332号の目次
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○BizArts 3rd 「第五章 第六節 システムの拡大」
 タスク管理を掘り下げていく企画。連載のまとめに入っています。

○でんでんコンバーターで電子書籍を作る vol.9
 でんでんコンバーターを使って電子書籍を作る方法を紹介していきます。

○艱難Think 「昔から言われていたとしても」
 週替わり連載。今週は少しディープめのエッセイです。

○Rashitaの本棚 『ルポ トランプ王国――もう一つのアメリカを行く』(金成 隆一)
 Rashitaの本棚から一冊紹介するコーナー。新刊あり古本あり。

○物書きエッセイ 「執筆と共にある問い」
 物を書くことや考えることについてのエッセイです。

○アイデア・パターン 009 「疑問の変換」


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